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サントリーサンバーズ・優勝ドキュメント

2年越しでつかんだ栄冠

1年前、失意に沈んだ決勝のコートに、今年は赤い歓喜の輪ができた。4月14日、かつて5連覇したサントリーが、再び王者の称号をつかんだ。

文/米虫紀子

「優勝という結果だけを求めて、1年間やってきました」。

 優勝決定後、サントリーの主将・栗原は、“結果”という言葉を繰り返した。それは昨年唯一手が届かなかったものだった。

 昨季、レギュラーラウンドを1位で終え、セミファイナルもスムーズに通過し決勝に臨んだ。順調に勝ち進んだことが逆にプレッシャーになった。山村は、「『勝ちたい』じゃなく、『勝たなきゃ』という雰囲気になっていた」と言う。荻野も「決勝はチームが雰囲気にのまれて浮き足立っていたと思う」と話した。決勝という舞台に、そして崖っぷちから勝ち残ってきた堺ブレイザーズの勢いにのまれて、築き上げてきたサントリーのバレーを出し切ることができず、フルセットの末連敗(昨季は3戦2勝方式)。栗原は、「結果がすべて」とうなだれた。

 その苦い経験を、今年ムダにはしなかった。

 今季も昨季と同じく、レギュラーラウンド、セミファイナル共に1位で通過。決勝に向けてのミーティングで、河野監督は選手にこう話したという。「ガチガチになってスタートするのは間違いないだろう。そういう展開になっても、必ずワンチャンスが来て(流れが)変わるから、とにかく我々のリズムをキープして、戦略がぶれないようにやっていこう」。

 決勝の立ち上がり、サントリーの動きは硬く、サーブレシーブにミスが出たりコンビにズレが生じ、一時は4点差をつけられた。

「緊張していた。昨年を思い出すような出だしだった」と栗原。しかし、そのまま立て直せずセットを失った昨年とは違った。「焦ってバタバタしなかったのがよかった。やることは決まっていたから。サイドアウトをとって、ニコロフと今田をワンタッチでなんとか拾って切り返す、それが徐々にできた。逆に、相手の方が焦り始めたようだった」。

 セミファイナルから絶好調の新外国人・レオナルドが、苦しい状況で確実にスパイクを決めたことも大きかった。

 そしてワンチャンスは来た。1点差まで追い上げたところで、東レ・今田のセンターからのバックアタックを坂本がブロックして同点。さらに、東レの大砲・ニコロフのライトスパイクを再び坂本がシャットアウトし、逆転。コンビも冴え、いつものサントリーの姿を取り戻していた。

 流れを変えたブロックも、昨年の教訓を活かしたものだった。

「昨年負けて、何が足りなかったのかと考えたらブロックだった。うちの売りはサーブで、かなり効果率は高かったけれど、その後のディフェンスがあまりにもお粗末すぎた」(河野監督)。

 昨季、サーブ効果率1、2位だった越川とジョエルのサーブで崩し、相手を二段トスにしても、特に決勝では堺のロドリゴや石島のスパイクを止められず、得点につなげられなかった。「その反省から、相手を崩した時のサイドへのブロックを、ずっとうるさく言い続けてきた。それがよくなると、レシーブも連動して上がるようになった」。決勝だけを比べると、昨年は1セット当たりのブロック本数が1.5本だったが、今年は3.5本と、強化の成果が表れた。しかも相手にダメージを与える要所でのブロックや、効果的なワンタッチも多かった。レシーブも集中力が高く、東レのお株を奪う粘りも見せた。

 一方、昨季から変わらず磨きをかけてきたのはサーブと、センターを中心とする多彩な攻撃だ。

 能力の高い攻撃陣を、司令塔・栗原が巧みに操る。レギュラーラウンド序盤は、直前に合流した全日本メンバーとの連携面に不安があり、3連敗するなど苦しんだが、その不安も徐々に解消。特に、セミファイナルのトスワークは相手を脱帽させた。津曲、荻野の正確なサーブレシーブと、スパイカー個々の好調さもあいまって、自在のコンビネーションで相手を翻弄した。

 豊田合成の北川は、セミファイナルでサントリーに敗れた後、こう話した。「サントリーは攻撃の選択肢が多いので、ブロックを絞り込めない。センターと単純なサイド攻撃だけじゃなく、時間差攻撃に越川も荻野さんも絡めるし、さらにその裏のレフトからのバックアタックもある。あれはサントリーだからこそできること。強いです…」。

 昨年の決勝。栗原は初戦、持ち前のトスワークを発揮できないまま途中交替し、2戦目は先発を外れた。敗れた瞬間、コートに仰向けに倒れたまま動けなかった。

 今年はスタートから最後まで、決勝のコートに立っていた。マッチポイントから、ニコロフのスパイクがアウトになったのを見届けると、両手を掲げて跳びはね、チームメイトの歓喜の輪に吸い込まれた。

「やってきたことは間違っていなかった。本当に、今日はうれしいです」。

 コートに響き渡る人一倍大きな声とリーダーシップでチームを引っ張ってきた主将は、安堵の表情で語った。

層の厚いセンター陣

 サントリーの攻撃の軸となるセンター。その重要性を、本人たちも自負している。坂本はレギュラーラウンド中、こう話した。「うちは他チームよりセンターの打数が多いので、センターが高い決定率を残さないと、うちのバレーが展開できない。だから4人とも意識を高く持っているし、マークされてもかわせるだけの練習はしている。マークされたから決定率が下がりました、ではダメなので」。

 レギュラーラウンドでチームが挙げたアタックによる得点のうち、センターの得点の割合は27.5%で、8チーム中トップだった。

 全日本選手の山村が世界バレーで膝を痛め、開幕時は万全の状態ではなかった。開幕戦は出場したものの、2戦目からはベンチを外れた。出ようと思えば出られる状態ではあったが、無理をして出る必要がなかった。他の3人が、山村の不在を感じさせない存在感を発揮したからだ。

 坂本は、昨季は腰の故障で出遅れたが、今季は開幕からシーズンを通して安定感のあるプレーを見せた。

 新人だった昨季、抜擢に応える活躍を見せた鈴木は、そのパワーと199cmの高さに、今季スピードも加わった。栗原は言う。「鈴木とは特に相性がいい。あのクイックのスピードなら、相手がリードブロックで来たら止まらないと思う」。

 4年前サイドアタッカーからセンターに転向した阿南は、今季の4戦目にプレミアリーグ(Vリーグを含む)初先発を果たした。その後も8試合に先発し、約60%の高い決定率を残した。

「僕の出る幕ないでしょ」と苦笑していた山村。2月17日の堺戦で約1ヶ月半ぶりにベンチ入りし、「久しぶりにユニフォーム着ちゃった」と照れくさそうに笑った。ベンチに入っていない間も、試合中はアップゾーンの側に立って声を出しチームを盛り上げた。練習中も、試合のコートの中でも、周りの雰囲気を敏感に察知し、声をかけられる選手だ。プレー面は言うまでもなく、ムードメーカーとしてもチームに欠かせない。

 河野監督は、「核となる選手は決まっているけれど、その中で当然コンディションが悪い選手も出てくる。そこで、センターだけでなく他のポジションも、替わった選手がうまくつないでくれたから安定した力を出すことができた」と今季を総括した。

 セッターの吉田は、レギュラーラウンド終盤、膝を故障した栗原に替わり先発してゲームを作り、持ち味のサーブでもキープレーヤーとなった。サイドでは、少ないチャンスながら木原や桑田、村上が、荻野、越川に替わって役割を果たした試合もあった。

 5連覇時代は、最強助っ人と言われたジルソンを軸としてまとまったチームだった。今季準優勝の東レも、世界トップクラスのスーパーエース・ニコロフが柱となった。

 一方、今季のサントリーは、傑出した一つの個に頼るのではなく、優れた個々が結集し、優勝を勝ち取った。